HYROX創業者がXENOMに出資・取締役就任 — 「フィットネスの十種競技」XENOMとは何か、HYROXとどう違うのかを解説

2026年10月7日、HYROXの創業者であるChristian Toetzke(クリスチャン・テツケ)氏とMoritz Fürste(モーリッツ・フュルステ)氏が、米国発の新しいフィットネス競技シリーズXENOM(ゼノム)に出資し、同社の取締役会に加わったことが発表されました。あわせてXENOMとHYROXは、マーケティング・イベント活性化・教育の分野で戦略的パートナーシップを結びました。「XENOMとは何か」「HYROXと何が違うのか」「日本のHYROX参加者に関係があるのか」——この記事では、公開情報をもとに、発表の要点からXENOMの競技内容・採点方式・2027年の展望までを整理します。
01発表の要点:何が起きたのか
XENOMが2026年10月7日(ロンドン発)に公式サイトで発表した内容と、米Athletech Newsの同日報道をあわせると、要点は次の4つです。
- 出資:HYROX創業者のToetzke氏とFürste氏がXENOMに出資した。出資額・持分比率は公表されていない
- 取締役就任:両氏はXENOMの取締役会(board of directors)に加わった。取締役会にはすでに、XENOMのシードラウンドを主導した投資会社WNDR(WndrCo。Jeffrey Katzenberg氏・Sujay Jaswa氏が率いる)の代表者が入っている。Athletech Newsによれば、WNDRは9月のHYROXの株主転換の際にHYROXにも出資したと報じられている
- 戦略的パートナーシップ:XENOMとHYROXは、マーケティング、イベント活性化(event activation)、教育(education)の分野で協力する。具体的な施策の内容は発表時点では示されていない
- 両者の関係:XENOM創業者兼CEOのKeith Barlow(キース・バーロウ)氏は、2020年からHYROX創業者の2人と仕事をしてきたと発表文に記されている
時系列で見ると、この発表は2026年9月8日に公表されたHYROXの株主構成の転換(Infrontが保有していた過半数株式を、L Cattertonが率いる投資家グループと創業者らが取得)の約1カ月後にあたります。HYROX創業者の2人は、HYROXの経営に引き続き関与しながら、別の競技シリーズにも出資者・取締役として関わる形になります。出資に用いた法人など、投資の詳細は公表されていません。なお、9月の株主転換の報道の際にも、業界メディアHybrid Fitness Mediaの取材に対してToetzke氏がXENOMへの関与に言及していたと報じられており、今回の発表では、XENOM公式が両氏の出資・取締役就任と、HYROXとの戦略的提携をあらためて公表しています。HYROXの株主転換については「HYROXの株主構成が転換」で解説しています。
02XENOMとは何か — 基本プロフィール
XENOMは、2026年2月末に発表された新しいフィットネス競技シリーズです。自らを「The Decathlon of Fitness(フィットネスの十種競技)」と呼び、最大筋力・体操系(ジムナスティクス)・有酸素能力を10の固定種目で測り、1つの合計スコアで評価するという考え方を掲げています。公開情報から分かるプロフィールを整理します。
Keith Barlow氏はAthletech Newsの取材で、XENOMを「フィットネス版のIronman(アイアンマン)」のような、誰もが同じ基準で挑戦できるグローバルな競技プラットフォームにしたいと語っています。HYROXが「8つのランと8つのステーションを一定の重量・距離で全世界共通にした」ことで成長したのと同じ発想を、より幅広い体力要素(最大筋力や体操系の技術を含む)に広げたもの、と理解すると分かりやすいでしょう。
03競技フォーマット:10種目を2日間で
XENOMの最大の特徴は、10の固定種目を2日間かけて順番にこなし、種目ごとの得点の合計で順位を決めることです。HYROXのように1本のレースをスタートからゴールまで連続して走るのではなく、陸上の十種競技のように「種目ごとに区切って測る」形式です。公式サイトに掲載されている10種目は次のとおりです(種目名は公式表記をもとにROXNOW編集部が日本語化。重量や細かな規定は大会ごとに公式発表を確認してください)。
HYROX参加者の視点で見ると、005(スキーエルゴ+ラン)や008(バーピー、エルゴ系のAMRAP)はHYROXの種目と重なる要素がありますが、001・007・009の最大筋力系、002・006・010の体操系(ロープクライム、マッスルアップ、ハンドスタンドプッシュアップ)は、HYROXにはない技術要素です。HYROXでもランに加えて8種目をこなす準備が必要です。一方、XENOMのRX・Eliteではウエイトリフティングや体操系の技術も得点を左右します。Intermediate・Foundationsでは動作や重量が調整されるため、全参加者に同じ高度な技術が求められるわけではありません。
04採点方式:EPI(Elite Performance Index)
XENOMの採点方式はEPI(Elite Performance Index)と呼ばれます。公式サイトの採点ページと業界メディアの解説をもとに整理すると、仕組みは次のとおりです。
- 各種目に1,000点を基準(ベンチマーク)とする得点基準が設定されている。公式サイトは「基準を上回れば1,000点を超える得点も可能」としている
- 10種目それぞれの得点を合計したものが、その選手のEPI。公式サイトは「あなたのスコア=あなたの世界ランキング」と説明しており、順位ではなく記録そのものに点を付ける「絶対評価」である点を強調している(誰と同じ大会に出たかで得点が変わらない)。ただし、EPIはDivisionやカテゴリーごとに算出されるため、異なる部門の数値をそのまま同じ条件の記録として比べることはできない
- 得点の計算式は、公式サイトによると陸上の十種競技で1984年から使われている採点式と同じ形(記録と基準値の差をべき乗して係数をかける方式)。式の係数は種目・Division・性別ごとに設定され、公式サイトの採点表で公開されている
- 同点の場合は、(1)より多くの種目で高得点だった方、(2)それでも同じなら単一種目の最高得点が高い方、(3)それでも同じなら同順位、という順で決める(公式サイト)
- 業界メディアHybrid Fitness Mediaの解説(2026年)では、EPIの値によって選手をNovice(0〜2,000)/Intermediate(2,000〜3,500)/RX(3,501〜5,000)/RX+(5,001〜7,000)/Elite(7,000以上)といった帯に分類する考え方が紹介されている。ただし公式サイトの採点ページにはこの帯の記載がなく、現在も使われているかは確認できていない。出場するDivisionを決める現行の資格基準としては使わず、公式の部門説明を確認したい
HYROXでは総合タイムで順位を競い、ステーションごとのスプリットは分析のための補助情報です。XENOMでは逆に、種目ごとの得点が主役で、合計点が総合評価になります。そのため、ある種目が苦手でも他の種目で挽回できます。総合点を伸ばすには苦手種目の改善も重要ですが、「全種目で平均以上」が上位に入るための条件として定められているわけではありません。
05Division・参加枠・参加費
Divisionは、2026年2月の発表時点ではElite・RX・Competeの3つでしたが、2026年10月11日に確認した公式「What is XENOM」では4つのDivisionが案内されています。ただし、10月7日の提携発表には従来の3区分の記述が残っているため、出場時は各大会の販売ページで選べる部門と条件を確認してください。
- 参加形態:個人、または同性ペア(発表時の説明)
- 参加費(初戦ダラスの発表時の公表値):個人500米ドル(早期販売価格)、ペア1人あたり450米ドル、観戦25米ドル。公式発表では、抽選で無料枠250人分が用意された
- 参加枠:発表時点で1大会2,000枠
- 賞金:初戦ダラスでは総額7万5,000ドルの賞金が出た(Athletech News)
Foundations Divisionの新設により、「本格派向け」という当初の打ち出しからは間口が広がっています。上記の参加費は初戦ダラスの発表時点の価格であり、現在の全大会に共通する料金ではありません。日本円での負担は為替や手数料でも変わるため、出場する大会の販売画面で確認してください。
062026年の歩みと2027年シーズン
XENOMは「Season 001」と銘打った最初のシーズンを2026年に始めました。発表時点(2026年2月)では米国と欧州で11大会を計画していると報じられましたが、実際に実施・予定されている大会は、公開情報で確認できる範囲では次のとおりです。
公式発表では、2027年が「初の本格的な国際シーズン(first full international season)」と位置づけられています。2026年9月の業界メディアの報道では、2027年前半にさらに3〜5大会が加わる見込みとされていました。また、Barlow氏はダラス大会後のAthletech Newsの取材に対し、将来的には北米・欧州・アジアで年間30〜60大会を目指すと語っています。ただし、2026年10月11日に確認した公式の大会・チケット一覧では、アジアや日本の具体的な開催予定は確認できませんでした。
07HYROXとXENOMはどう違うのか
両者は「標準化されたフィットネス競技」という点で共通していますが、設計思想はかなり異なります。公開情報をもとに、主な違いを項目ごとに並べます。
整理すると、HYROXは「ランと8種目を組み合わせて総合タイムを競うレース」、XENOMは「10種目の得点で総合的な体力を測る競技会」です。今回の提携で両者が1つになるわけではなく、公式発表でも「フィットネスを世界最大のスポーツにする」という目標を共有する別々のシリーズとして語られています。
08当事者はどう語っているか
公式発表文とAthletech Newsの記事から、3人の発言の要旨を紹介します(引用は短く、要旨はROXNOW編集部の訳・要約です)。
- Christian Toetzke氏(HYROX創業者):創業者たちは以前から「フィットネスは世界最大級のスポーツになりうる」と信じてきたとし、HYROXが持久系のレースを確立した一方で、XENOMは筋力と体操系を加えて「総合的な体力の標準化されたテスト」という絵を完成させる、という趣旨を述べています。発表文の一節は “We have always believed that fitness had the potential to become one of the largest sports in the world”
- Moritz Fürste氏(HYROX共同創業者、元ホッケー五輪金メダリスト):大きなコミュニティのために設計されたフォーマットを高い水準で運営すれば、大きなものを生み出せる——HYROXで実証したこの考え方をXENOMも踏襲している、という趣旨です
- Keith Barlow氏(XENOM創業者兼CEO):HYROX創業者の経験とWNDRの支援により、最初からグローバルなイベント運営の基盤を築けるとし、XENOMを「総合パフォーマンスの世界的プラットフォーム」にしたいと述べています。Athletech Newsには、2人は「この競技で誰よりも多くの市場にフィットネスイベントを持ち込んだ」という趣旨の発言も掲載されています。発表文の一節は “You can’t overstate how beneficial it is to have this group of people around you”
Athletech Newsによると、Barlow氏はもともと「本格派の選手向けの競技会がない」という市場の空白を埋めるためにXENOMを創設したと説明しています。また、2026年9月の業界メディアの報道では、Toetzke氏がHYROXとXENOMの関係を「空白を埋める」ものとして語ったとされています。HYROXが取り込んできた一般層と、CrossFit的な高強度競技を求める層の間にある空白を、2つのシリーズで分担して埋めるという考え方だと読めます。
09なぜHYROX創業者がXENOMに関わるのか(編集部の見方)
ここからはROXNOW編集部の考察です。公表されていない意図を断定するものではありません。
- 「競合」ではなく「隣接市場」と見ている可能性:XENOMはCrossFit経験者などに向けた競技として登場し、HYROXとは重視する能力が異なる。ただし、両者の参加者がどの程度重なるかを示すデータは確認できていない。HYROX側から見れば、自社の間口の広さを守りながら、競技志向の層にも別ブランドで接点を持てる
- 運営ノウハウの横展開:HYROXは「標準化・大量運営・世界同一基準」というイベント運営のモデルで成長した。パートナーシップの対象が「マーケティング・イベント活性化・教育」であることは、このノウハウをXENOMに提供する枠組みと読める
- 資本の動きとの整合:9月にHYROXの株主構成が転換し、創業者らが新しい投資家グループとともに関与を続ける形になった。創業者が別の競技シリーズに出資することは、「フィットネスをスポーツ化する」という長期の目標を複数のブランドで追う動きと整合する
- XENOM側の事情:ロンドン大会の参加者数が想定を下回ったとの報道もあり、XENOMにとっては「世界最大のフィットネスレースの創業者が参画する」こと自体が、信頼性と集客の面で大きな意味を持つ
一方で、注意すべき点もあります。HYROXの創業者が別の競技シリーズの取締役を兼ねることで、将来的にHYROXの大会やコミュニティがXENOMの集客に使われる可能性は考えられます。それが参加者にとってメリット(選択肢が増える)になるのか、HYROX本体の体験を変えるのかは、現時点では分かりません。
10日本のHYROX参加者にとって変わること・変わらないこと
- 変わらない:今回の提携発表には、HYROXの競技ルール、Division、重量、Age Groupの仕組み、世界選手権の出場枠、日本大会の日程を変更するという説明はない。今後の別の告知による変更とは分けて確認したい
- 変わらない:エントリー済みの大会・チケットの扱い。XENOMとHYROXの提携によって、HYROXのエントリー条件や価格が変わるという発表はない
- 今後ありうること:HYROXの大会やSNS、Training Clubなどの場でXENOMの告知・体験企画が行われる可能性(提携の対象が「マーケティング・イベント活性化・教育」であるため)。ただし具体策は未発表
- XENOMに出たい場合:今回確認できた開催予定は欧米で、日本からは遠征が必要。参加費は大会ごとの販売画面で確認する。RX・Eliteではウエイトリフティングや体操系の技術が重要になる一方、Intermediate・Foundationsでは動作や重量が調整されるため、自分に合う部門を確認したい
HYROXで「もっと強くなりたい」「次の目標が欲しい」と感じている人にとって、XENOMは将来の選択肢の一つになりうるものです。ただし現時点では、日本からの参加は遠征を伴い、出場部門に応じた技術の準備も必要です。HYROX内で次の目標を探す方法は「HYROXの次の目標マップ」「世界選手権・Elite15・Challenger15への道」で整理しています。
11今後のウォッチポイント
- パートナーシップの具体策:HYROXの大会やコミュニティでXENOM関連の施策が始まるか。「教育(education)」が具体的に何を指すか(コーチ向けプログラム、Training Clubとの連携など)
- 2027年シーズンの大会一覧:「初の本格的な国際シーズン」として、欧米以外の開催地が加わるか。Barlow氏は将来的にアジアを含む年間30〜60大会を目標に挙げており、日本やアジアの大会が発表されれば、日本のHYROX参加者にとっても現実的な選択肢になる
- Divisionと採点基準の変更:現行の公式紹介はFoundationsを含む4 Divisionだが、提携発表には従来の3区分の記述も残る。大会ごとの募集部門、採点係数、過去に報じられたEPIの帯が現在も使われるかを確認したい
- HYROX本体への影響:株主転換後のHYROXが、XENOMとの役割分担をどう説明するか。HYROXの大会数・参加者数の公表値(2025/26は100大会以上・140万人超)が今後どう推移するか
- 創業者の役割の変化:Toetzke氏・Fürste氏がHYROXの経営にどの程度関与し続けるか。公式の説明では、両氏はHYROXに引き続き関与するとされている
ROXNOWでは、HYROX公式およびXENOM公式の発表を確認したうえで、必要に応じてこの記事を更新します。HYROXの事業面の背景は「HYROXはなぜ世界で急成長しているのか」「HYROXの歴史」もあわせてご覧ください。
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XENOM公式発表「HYROX Founders Invest in XENOM and Form Strategic Partnership」(2026年10月7日):xenom.global/news/xenom-x-hyrox-announcement
XENOM公式:10種目/大会一覧/チケット一覧(マラガ日程)/ロンドン大会案内/Reebokとの提携発表
Athletech News「Hyrox Founders Invest in Xenom as Fitness Competitions Strike Partnership」(2026年10月7日):athletechnews.com
XENOM公式「What is XENOM」(Division・2日間の種目構成):xenom.global/what-is-xenom/公式「Scoring」(EPIの計算式・同点時の扱い):xenom.global/scoring
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Athletech News「At First Xenom Event, Enthusiasm Grows for the Future of Competitive Fitness」(2026年6月30日、ダラス大会の出場者数・賞金・今後の大会目標):athletechnews.com
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Infrontプレスリリース(2026年9月8日、HYROXの株主構成転換・2025/26シーズンの大会数と参加者数):infront.sport
※人名のカタカナ表記はROXNOW編集部によるものです。発言の引用は公式発表文からの短い抜粋で、要旨はROXNOW編集部の要約・訳です。
※本記事はROXNOW編集部が公開情報をもとに独自に執筆した解説記事です。ROXNOWはHYROXに特化した非公式・独立系の日本語メディアです。出資額・契約条件など非公開の情報は含みません。(情報確認日 2026.10.11)
